各話の記事
『薬屋のひとりごと』は、日向夏さんの小説を原作としたアニメです。小説は投稿サイトの小説家になろうで始まり、のちにヒーロー文庫(主婦の友社)から刊行されました。漫画版は、ねこクラゲさん作画のビッグガンガン版と、倉田三ノ路さんのサンデーGX版の2つがあります。アニメの制作は TOHO animation STUDIO と OLM、監督は長沼範裕さん。第1期が2023年10月から全24話、第2期が2025年1月から第25〜48話として放送され、第3期は2026年10月2日に始まりました。話数は通しで数えるので、第3期の初回は第49話です。
舞台は架空の中華風の国の後宮。花街で薬屋を営んでいた少女・猫猫(マオマオ)は、さらわれて後宮の下女として売られてしまいます。目立たないように暮らすつもりが、薬と毒の知識を見込まれて、美形の宦官・壬氏(ジンシ)に引き立てられ、後宮で起きる不審な死や事件の謎を解いていくことになります。
このページでは、この作品に寄せられた海外の掲示板(4chan の /a/ 板と Reddit の r/anime)の反応をまとめています。当サイトでは第3期から記事にしていて、各話の記事は放送のたびに加えていきます。
海外では The Apothecary Diaries

英題は The Apothecary Diaries。英語圏ではクランチロールで配信され、第1期の時点から毎週の感想スレが大きく伸びる作品になりました。後宮ものという日本ではおなじみの型も、英語圏の視聴者には新鮮に映ったようで、謎解きものとして、また猫猫と壬氏のじれったい関係を追う話として見られています。中華風の後宮を舞台にした作品が出ると、海外では真っ先に比べる相手として名前が挙がるほどです。
英語圏ならではの事情もあります。英語版では登場人物の名前が、中国語読みと日本語読みの混ざった綴りになっていて、同じ一族の名前でも英語の綴りだけではつながりが見えにくいことがあります。漢字を知っている人がそれを補う書き込みが、スレではたびたび出ます。
第3期1話(第49話)── 猫猫が帰ってきた
1年あまりの間を置いて始まった第3期の初回は、何より猫猫の帰還を喜ぶ空気に包まれました。「名探偵猫猫、営業再開。」という書き込みがその気分をよく表しています。花街で引き取った少年・趙迂とのやり取りには「猫猫に事実上の弟ができたって感じでなんか可愛いw」という感想が付きました。
物語の面でいちばん話題になったのは、玉葉妃の立后と跡継ぎの問題です。生まれた赤ちゃんを東宮にするつもりなのかという問いに、「皇帝はずっと壬氏を飛ばそうとしてるんだと思ってた。」という返信が付き、宮廷の権力争いの読み合いが始まりました。羅漢が鳳仙と過ごす場面をほめた書き込みには、「厳密には将棋じゃなくて囲碁を打ってたよ」と細かな訂正が入り、書き手がすぐに礼を言うという、この作品のスレらしいやり取りもありました。梨花妃の出産にも安堵の声が多く、第1期で嫌われ役だった彼女を、「あの人がひどくて情緒不安定な振る舞いをしてたのは、重金属中毒のせいだよ。」とかばう書き込みも出ています。
一方で、Reddit の感想スレを大きく埋めたのは配信の字幕の不具合でした。画面に文字が出るたびに台詞の字幕が消えてしまい、「こんなにセリフが多い人気作で、よくここまでやらかせたもんだと逆に感心するわ…」とまで言われています。4chan のほうは相変わらずの調子で、今期こそ薬師らしい仕事を見たいという書き込みに「あいつは暇を持て余してる毒見役だぞ。」と返すような、短い応酬が続きました。
第3期2話(第50話)── 天女の衣と、壁に向かう高順

2話目の前半は、猫猫が古着屋で聞いた湖に消えた天女の話です。店主の語る衣が、燃えない石綿の布だと猫猫が見抜く展開に、4chan の最初の反応は「なんか体に悪そう」でした。英語圏で asbestos(石綿)といえば、健康被害と訴訟を真っ先に連想させる言葉です。Reddit では「今でも耳に残ってる」という書き込みに、アメリカのテレビで長年流れてきた弁護士事務所のCMの決まり文句、『あなたは補償金を受け取れる可能性があります』が添えられていました。石綿の布が本当にあったのかを調べ始める人も多く、古代ローマのテーブルクロスやマルコ・ポーロの旅行記まで持ち出されています。
天女の話そのものにも厳しい目が向きました。「天女の話、家族の元へ帰りたがってるのに、結婚を迫り続けた時点でもうロマンじゃない。」という声に加え、羽衣を隠されて帰れなくなる話を、ヨーロッパに伝わる白鳥の乙女の伝説と重ねる人もいます。英語圏の視聴者には、こちらのほうがなじみのある型です。
後半の主役は高順でした。猫猫が妓楼の娘たちをずらりと並べて壬氏に選ばせるあいだ、高順は壁に頭をつけて目をそらしていて、題名にも取った「あの場面では、みんな高順だったよ」が大きく伸びました。「自分でブレア・ウィッチやってた」という返信は、ホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の結末で、部屋の隅に向かって立ち尽くす人物を指したものです。猫猫のしたたかさには「猫猫、このワルめ〜」と声がかかりました。英語の you dog は、ずるい相手を親しみを込めて冷やかす言い方で、すかさず「いや、猫だよ」と返されています。綿入れを何枚も重ね着した趙迂には、「趙迂が『クリスマス・ストーリー』のランディみたいになってる。」という声も。アメリカでは毎年クリスマスにテレビで流れる映画で、着ぶくれして腕も下ろせない弟の姿は誰でも知っている場面です。
第3期3話(第51話)── 冷たい現実主義の皮をかぶった情け

3話目でいちばん意見が割れたのは、薬代を払えないなら妹を売ると言い放った猫猫の態度でした。4chan では「あいつ、金のためなら何でもやるな。」とあきれる声が上がり、Reddit でも「今回の猫猫の冷たさにはちょっと驚いた。」という人がいます。それでも、題名に取った「冷たい現実主義の皮をかぶった、情けだね。」という一言が多くの人の受け止め方を代表していて、姉妹が父親より緑青館を選んだこと自体が答えだという見方に支持が集まりました。「選べる道の少ない世界では、今の状況でできる限りのことをするしかない。」という書き込みもあります。
そこから、登場人物に今の時代の正義感を持たせない作りを評価する書き込みが伸びました。それへの返信に出てくるジョン・ブラウンは、19世紀のアメリカで奴隷制に武力で立ち向かった人物です。英語圏で奴隷制の話になると、たびたび引き合いに出される名前です。
妹の指を黒ずませた麦角の毒と、物乞いに菓子を配る白娘々の正体をめぐる推理も盛んで、「毎週おなじみ、古代の薬と毒の豆知識。」と楽しむ人がいました。「本当の狙いはハロウィン潰しだな。」という冗談は、アメリカで1970年代から広まった、ハロウィンのお菓子に毒が仕込まれているという噂をもじったものです。父親を突き放した「猫猫の『あなたは他人だ』は容赦なかったな(笑)」には、実の父の羅漢への態度を重ねる声も続きました。
くり返し出てくる話題
猫猫と壬氏の距離
海外の反応の中心にあるのは、猫猫と壬氏の関係です。英語圏では、少しずつ距離が縮まっていく恋愛を slow burn と呼んで楽しむ文化があり、この作品はその代表として語られます。壬氏の好意に猫猫がまったく気づかない、あるいは気づかないふりをする場面が来るたびに、スレは沸きます。第50話では、猫猫が本当に気づいていないのか、気づかないふりをしているのかで議論になり、「気づいてるけど、自分自身に認めるのさえ難しいんだよ」という見方に支持が集まりました。
猫猫の好奇心
猫猫は目立ちたくないと言いながら、毒や薬が絡むとどうしても首を突っ込みます。英語のことわざ「好奇心は猫をも殺す」は、英語名に猫を重ねた猫猫にぴったりだと、毎回のように持ち出されます。
放送の区切り
英語圏のファンは、日本の放送の区切りであるクールを cour と書いて話題にします。第3期が何話あるのかという質問には、「分割2クールだよ」という答えが返っていました。
英語の字幕
英語圏の視聴者は、配信の字幕を通してこの作品を見ています。第3期の初回で騒がれた字幕の不具合は、「第1話の字幕の問題(1行抜けてたのと、何か所か速すぎたの)は1日くらいで直ってた。」と報告されました。ただ、英語では grasshopper(バッタ)と locust(群れをなして作物を食い荒らすバッタ)を別の虫として区別するため、字幕の中で両者が入れ替わる点にはまだ戸惑いの声が出ています。第3期は蝗害が大きな話題になりそうなだけに、気になる人は多いようです。
見る・読む
原作の小説はヒーロー文庫から刊行されています。漫画版から入るのもおすすめです。下の楽天ブックスからどうぞ。
『薬屋のひとりごと』を読む
日向夏さんの小説(ヒーロー文庫)が原作です。漫画版は2つあり、下はねこクラゲさん作画のビッグガンガン版です。
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原作小説 1巻
漫画版 1巻